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  • 母として、教師として

    《 壁にあいた3つの穴の分の幸せ 》

    三姉妹の真ん中の娘。
    エミリ。

    3人の娘の中で、1番、自分を表現するのが、苦手な子。

    でも、誰よりも、心優しくて、自分のことより、人のことを思いやる子。

    彼女は、小さい時から、感受性が強く、自分の想いをどう表現していいのか分からず、よく荒れた。

    ☆。.:*・゜

    福岡の家の壁には、3つの穴があいていた。

    それは、全てエミリが作った穴。

    エミリは、小学校6年生の時、イジメを受けた。

    それは、ひどいイジメだった。

    彼女の机の上に、ポスカで
    「死ね」「消えろ」「学校来んな」「ウザイ」…

    その言葉は、机の上だけでなく、机の足にも、机の裏にも、イスにも、

    そして、彼女が廊下側に座っていたので、彼女の横のガラス窓にも、カーテンにも…

    いろんな色のポスカで、ビッシリと書かれていた。

    ……

    「ママ。イジメって、なに…」

    その一言で、何かがあったと察し、娘の学校へ飛んで行った。

    そこで、私が見た光景だった。

    それを見た時、なんの感情かわからない涙が、ツツゥーと私の目から流れた。

    感情がついていってなかったんだと思う。

    涙が流れたあと、悲しみのような怒りのような想いがわいてきた。

    私は、そのとき、担任の先生に、こう言った。

    「先生。エミリは、この机で、毎日、勉強しているのですか…」

    声を出す元気もなく、ふりしぼるようにそう言った。

    すると、その担任の先生は、顔色ひとつ変えず

    『香葉村さん。ポスカって、水性ですよ。消えるんですよ。』

    と、そう言った。

    その言葉を聞いた時

    「そうですよね。ポスカって、水性ですよね。消えるんですよね。」

    「でも…」

    次の瞬間、私は叫んでいた。

    「私の娘の心の傷は、決して消えません!

    文字が消えたとしても、一生消えません。

    この机で勉強したこと。
    みんながそれを見て笑っていたこと。
    先生が何もしなかったこと。
    座り続けなければいけなかったこと。

    そして、
    この机が自分の席であったこと。

    全て消えません!」

    それから…
    私は、担任の先生に、なんて言ったのか、覚えてはいない。

    必死で何かを訴えた。
    泣きながら、必死で訴えた。

    次の日。

    私は、娘に言った。

    『エミリ。学校行かなくていいよ。』

    すると、娘は
    「学校に行かなくていいの?」
    「行かなくて…行かなくていいんだね。」と、目に涙をため、震えながら言った。

    「行かなくていいんだね。」

    その言葉を聞いた時、たまらない思いが込み上げてきた。

    こんなになるまで、我慢してたんだ。私に、何も言わず、ずっと耐えていたんだ。

    私は、何をしていたんだ。

    『ごめんね。エミリ。ごめんね。
    そんな辛い目にあわせてごめんね。キツかったよね。苦しかったよね。

    たくさん我慢させてごめんね。

    エミリ…学校は、楽しいところなんだよ。苦しいところではない。

    だから、行かなくていいよ。』

    そう言うと、娘は
    ウワーーーーーーーーと、
    声をあげて泣いた。

    そして
    壁をドンドンたたいて泣き叫んだ。

    そして、壁に1個目の穴があいた。

    次の日、私は学校を休んで、娘の学校に行った。

    担任の先生と、そして、校長先生と話した。

    その時。
    娘があるイジメを見た時に、「やめなよ!」と言ったことから、今度は娘に、イジメのほこ先が向いたことを知った。

    始まりは、ある日突然やってきた。

    エミリが登校してきた時、あるグループの子どもたちが

    「エミリ。机の中を開けてみて!」と、言った。

    そして
    ケラケラ笑った。

    エミリが机の引き出しを開けると、そこには、彼女のカバンに付けていたマスコットが、カッターで切り刻まれていた。

    切り刻まれていて、中から綿が、引き出しにいっぱい広がっていた。

    その驚く顔を見て笑う子どもたち。

    そのことを聞いた時、胸が張り裂けそうだった。

    私は、校長先生にお願いをして、その子たちに会わせてもらった。

    そして、勝負に出た。

    親の想いを話した。
    先生としての立場でも話した。

    必死だった。

    でも…あのときは、たぶん、親の想いの方でいっぱいだったと思う。

    人をいじめることが、どんなに悲しいことなのか。苦しめることになるのか。してはいないことなのか。

    1人1人の子どもたちは、とっても良い子だった。だから、集団としてのこわさも、伝えた。

    5人のグループの女の子たちは、泣きながら話を聞いてくれた。

    親が、どこまで出ていっていいのか悩んだ。でも、そのときの担任の先生に、私は、どうしても任せることができなかったのだ。

    そうでなければ、第2のエミリが出る。と、思った。

    それから、その子達は、娘に、あやまりに来てくれた。

    形的には、このことは終わった。

    でも…このことは、それからの娘の人生を大きく変えていった。

    自分を出せなくなっていった。

    家の壁に、2個目…3個目…の穴があいていった。

    私は、そのとき
    イジメというものが、どれだけ恐ろしいものであるかを知った。

    そして
    イジメを受けた子供の親が、こんなにも苦しいものであるかも、知った。

    代わってあげられるものなら、代わってあげたいと、何度思ったことだろう。。

    何もしてやれない自分が、情けなくてたまらなくて、涙が出た。

    私は、この経験をしてから、私のクラスの子どもたちには、決して「イジメを許さない!」という、さらに強い態度でのぞんでいくようになった。

    まるで、娘がそこにいるかのように…。

    ☆。.:*・゜☆。.:*・゜

    そんな娘も、社会人となり、熊本で働いている。

    私が、東京に出てきてから、去年の夏、「ママに話がある。」と、東京に出てきた。

    なんの話があるのだろう…と思っていたところ、彼女はこう言った。

    「ママ。私、留学したい。」

    「私、留学したいの。英語を学んで、海外で働きたい。そして、自分の夢を叶えたい」

    私は、びっくりした。

    彼女の口から『ゆめ』という言葉を初めて聞いたからだ。

    「ママ。私、ずっと、自分がイジメられる子だと思っていた。でもね。そう思っているのは、自分の思い違いかな…って思えるようになったの。

    私がイジメを受けたあのとき、ママは、必死で守ってくれたね。

    何回も、学校に来て、エミリの気持ちを伝えてくれたね。

    もう、そっとしておいてほしい!と思っていたのに、ママは、イジメに立ち向かっていってくれたね。必死だったね。

    私もさ。
    そろそろ、立ち向かっていこうかな…って思ってさ。」

    そう言って笑った。

    その顔を見た時、私は泣けてきてたまらなかった。

    やっとやっと、過去のことも、光に変えていけるようになった彼女の姿を見た。

    嬉しかった。
    心から嬉しかった

    ☆。.:*・゜

    そして、娘は、4月の末から半年間、セブ島に留学します。

    熊本で働いていた会社も辞め、住むところも離れ、全て手放して、セブへ行く。

    東京の私のところに送られてきたのは、たった3個のダンボールだけだった。

    あとは、全部手放し、スーツケースひとつで、セブへ旅立って行く。

    留学するその1週間前に、エミリと2人で、セブ島に入り、2人でセブ島を回る予定だ。

    エミリと2人だけの初めての旅。

    家の壁にあいた3つの穴も、埋まってしまうくらい、楽しんでこよう。

    そして、彼女の新しい旅立ちを心から祝福してあげよう。

    娘よ。
    自分の人生をあきらめんな。
    あなたの後ろには、ママがいる。

    また、何かあったら、しつこいくらい、ママが向かっていってあげる。

    だから、なんの心配もしないで、大きな羽を広げ飛んでいきなさい。

    人生は、これからだ!

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